
茂木:僕はもともと脳科学のなかでも、クオリア(感覚の持つ質感)や意識が自分の専門なのですが、須藤さんも意識の問題に関心があると伺いました。
須藤:高校生くらいから瞑想に興味があって、数年前ほど前から朝に30分ずつ瞑想しています。
茂木:毎日ですか、すごい!
須藤:でも、どうしても「飽き」は訪れるんです。だから、たまに違うものを取り入れますね。たとえば、座禅の組み方を変えてみたり、阿字観(真言宗の瞑想法)をやってみたり。
茂木:具体的にはどういう瞑想をされているんですか?
須藤:頭の中であれこれ考えることをやめるんです。頭の中で自分自身に語りかけていることを内的対話と呼ぶんですが、その80%がネガティブな言葉だと言われています。それを止めることができれば、人生はうまくいくんじゃないかと思います。
茂木:それって脳科学でも同じような議論があるんですよ。一般的に意識がいろいろなことを生み出すと思われがちですが、何かを生み出すのは無意識なんです。
何かの選択肢を生み出すのも無意識。それに対して意識は、その選択肢を選ばないという、いわば無意識の邪魔をする働きだと言われています。逆に言えば、無意識のダイナミクス(力学的作用)が滑らかに働くほど、良質な創造ができるんですね。
須藤:まさに瞑想も意識をストップさせることです。
茂木:何年も続けられていて、その効果は日々実感しますか?
須藤:毎朝の瞑想の最後に「今日が人生最後の日だと思って、毎分毎秒ベストを尽くす」と声に出して3回必ず唱えているんですよ。アファメーションというのですが、自分を励ます言葉や目標を声に出して言うことで、それが実現しやすくなるというのはあります。人間というのは、今日しか生きられないと思ったら、時間を無駄にしないんじゃないかな。

茂木:実は最近、僕も瞑想状態の脳に興味を持っているんです。というのも、脳科学の分野では瞑想状態の脳のデータは無いんですよ。
須藤:なぜ無いんですか?
茂木:これまでの脳科学では、瞑想によって高められた状態の脳というのは、そもそも研究対象にされてこなかったからです。典型的ないわゆるノーマルな状態の脳と、あとは病気でバランスを崩してしまっている状態の脳が研究対象だったんです。
須藤:なるほど。茂木さんが瞑想に興味を持ったきっかけは何だったんですか?
茂木:興味を持ったきっかけは2人います。1人は吉田松陰、もう1人はスティーブ・ジョブズです。吉田松陰が主宰していた松下村塾からは、高杉晋作などの有名な門下生を数多く輩出していますが、松陰が教えていたのはわずか2年なんですよ。なぜ、2年という短い期間にあれほどの門下生が出たのかと考えたときに、陽明学、つまり心の整え方を教えていたからではないかと思いあたりました。
須藤:歴史に名を残す人で瞑想的なものを取り入れている人は多いですよね。そういう人たちは、頭の中を整理する自分なりの方法を持っていると思いますね。
茂木:きっかけになったもう1人のスティーブ・ジョブズもそうですね。彼の自伝なんかでも明らかにされているけど、彼は若い時に、日本の禅僧に座禅を教わっていたんですよね。ジョブズみたいな人物が瞑想を取り入れていたということからも、僕は科学的に「瞑想」を研究してみたいなと思っているんです。
須藤:それは、ぜひ知りたいです。
茂木:自分はというと、落ち着きがない人間なのでじっと座禅を組んでいることが難しいんですよ。ですから、とにかく走っています。30分くらい走っていると、頭の中が整理されるんです。
須藤:走ることも瞑想ですよね。歩行禅という歩く瞑想があるくらいですからね。
茂木:そうですよね。ジョブズも重要な決定事項があるときは、必ず歩きながら決定を下すらしいです。3〜4時間歩きながら、重要案件について話をするんだそうです。
須藤:「悩んだときは動きを止めるな」って、以前読んだ本にも書いてありました。じっと椅子に座っているより動いた方が、考えが浮かぶそうです。
茂木:松下村塾しかり、ジョブズしかり、瞑想というか心の整え方って、ビジネスパーソンにおいても大切なんだなと思いますね。